抱かれる

Fが私を抱いた。

不安の解消に甘えた代価なのだろう。

Kに対しては、私はやめようと言えた。
抱かれなくても関係は維持できて、むしろ関係が変質することが怖かった。

Tは私を抱いた。作業のようなもの。
Tから好意をむけられて、拒絶した。
身体を代価にできるけど、気持ちを代価にはできない。

Fが私を抱いたとき、遠因になったのはせんせだ。
せんせが、Fを呼ばなければそうならなかったかも。
わからない。
せんせを少し恨む気持ちもある。
慕う気持ちはあるけれど、放り出されたかなしさもある。

Fが私を抱いたとき
いろいろバラバラになった。
気持ちの不快と身体の快のアンバランスをかんじた。

抱かれることができないと意味がないとかんじた。
だから応えた。
抱きたいから優しくするという、分かりやすい構造に納得もいった。

原因はわからない。いまさらだ。
ただ、自分の中では汚泥となり
苦しくなる。
解決するには、ひとりでは無理だ。
仕事ではガタガタだから、いまはできない。

でも、考えが入り込んでとまらない。
消したいのに浮かんでくる。

TAは、もっと侵入支配的で
他者から孤立させた。
身体を支配して医薬品を管理して時間を管理して
私を彼の世界に隔離していた。

彼がお金を管理して
やがて夜の仕事に沈めて逃げられないような算段をしていた。
このまま私は沈んでいくんだと
思って、私はせんせに会いたくなって電話した。

せんせには、なにも言わない。
ただ、会いたいというと、難しいと言われた。
別なことをすすめられた。

私は少し外をむくことができてTAから逃げ出した。

せんせには、Fとのことは知られたくない。
予測はしているかも、でめた確定的なことはいいたくない。

TAが囁く、俺しかいないよ。お前なんか、ほかの誰も大事にしないよ。粗末に扱われたやつを、大事に思うやつなんて、いない。

代価が必要だ。
愛されるためには、代価がいる。
私にはもう、なんの価値もない。